みなさんはブラックホールという天体をご存知だろうか?この天体は莫大な重力のために光さえ外に出てこれないのでこの名が付いた。

 ブラックホールは太陽のような恒星の屍である。恒星は燃え尽きた最後に大爆発を起こし、星の中心へと圧縮される。この圧縮がまた尋常ではない!圧縮後の密度は、1立方センチメートルで200億トン程度にまで高密度になるのだ。角砂糖1個の大きさで200億トンだ。人力どころか、世界最大級巨大クレーン船でさえ持ち上げることは不可能だ。

 この強大な重力により、ブラックホール付近では時空が大きくゆがんでしまうのだ。

 光でさえも、その道筋を曲げられ、「重力レンズ効果」で、ブラックホールの向こう側にある物体が2重3重の像に見えたりするのである。

 アインシュタインの相対性理論によると、光速近くで移動する人の時間は、静止している人から見るとゆっくり進む。実際に、宇宙飛行士は生きている間にアンドロメダまで往復出来る。しかし、その間に地球上では460万年も経ってしまうが・・・。つまり、光速近くで宇宙旅行をして帰ってくると、何世紀も未来の地球に行くことが出来るのだ。このように、アインシュタインの理論は未来へのタイムマシンを可能にしたが、過去へのタイムマシンも可能なのであろうか。

 ここで、ちょっと余談。

 上に、「光速近くで移動」とあるが、決して光速にまで加速してはいけないのだ。宇宙船の速度を上げていくと、宇宙船の中の時間の進み具合は遅くなる。それが、光速にまで到達した時、中の時間は全く進まなくなってしまう。そうなると、目的地へ到着したとき、誰がブレーキかけるのだ?時間が止まって宇宙船の中の誰しも動けなくなってしまっている。こうなっては目的地の星へ光速で衝突するしかないのである。

 みなさんも光速宇宙船の運転手になった暁には、決して最高速チャレンジなどしないように!スピードメーターが光速に到達した瞬間、凍りついたように宇宙船内すべてのものが静止してしまうのだ・・・。

 好きな人とこのままずーっと一緒にいたい・・・時間よ止まれ。そう思う恋人同士には打って付けの代物だろう。

 ブラックホールの果ての先は、別の世界に通じているという説もある。この二つの世界を結ぶ時空を「ワームホール」という。このワームホールを使えば過去へのタイムマシンが出来るのだ。

 しかし、出来たり消えたりし、非常に小さい不安定なワームホールを、宇宙船が通過できる程度にまで大きくしなければならず、またほうっておけば特異点(ブラックホールに落ちた物が最終的に到達する点)につぶれてしまうため、ワームホールを維持するマイナスのエネルギーが必要となる。また、ワームホールを光速近くまで加速減速しなければならず、とても出来そうに無い。

 技術的問題もさることながら、原理的にも問題点がある。もし、過去に戻るタイムマシンが出来れば、「親殺しのパラドックス」が起きてしまうのである。過去に戻って自分の親を殺害すれば、その結果として自分は生まれなくなるから、親はその子供に殺されることはない。この原理が破られてしまうことによって起きるパラドックスは、物理的に過去へのタイムマシンの実現を不可能としている。

 やはり、タイムトラベルは浦島太郎のように未来へ行く場合を除いて夢と考えたほうがよさそうだ。

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ニュートン別冊「星空への招待」より引用