あれから10年が経ち、かつて地球上で最も高価な宝石の代表格であったダイヤモンドも、今となっては、大量のダイヤモンドが市場に出回ってしまった事により宝石として使われることは皆無となった。ガラスよりも屈折率が高く強度があり、耐熱性に優れていることから、超薄型メガネレンズやカメラレンズ、防犯ガラス窓よりも強い超防犯ダイヤモンド窓など、多種多用な用途に使われるようになった。

 宝飾品としては使われなくなっても、実用材として利用価値が出てきたため、相場価格は大暴落から徐々に持ち直してきた。

 人生を掛けてダイヤモンドを取りに行った当人は、もうすでに寿命を迎えており、借金は親戚一同が支払うこととなってしまった。無謀にも人生全てをかけて世界長者番付一位を狙い、歴史に名を残す目論見は、結局価格の大暴落を引き起こし、底値を記録した時点で売り払い、皮肉にも世界で最も借金を残した人として歴史に見事名を残す事になったのであった。

 欲張り者は結局損をするという昔からよくある言い伝えは、科学技術が発達した現在になっても同じであることを証明してくれた。

 

おしまい。

 

※この物語はフィクションであり、内容はすべて架空のものです 。