ここ数年で、自動車のヘッドランプに変化が見られてきた。妙に白っぽい色で、やけに明るいランプをよく目に付くようになってきた。トラックや高級車に主に搭載されている。

 点灯した瞬間は一瞬異常に明るく、カメラのフラッシュが光った感じ。その後青白い光を放ちながら、徐々に純白光へと変化する。不思議なランプである。

 そのランプはHIDランプというものである。従来のハロゲンバルブはDC12ボルトでフィラメントを発光させているのに対し、HIDシステムはバルブ内の発光カプセルに封入されたキセノンガスと金属ヨウ化物に約20,000ボルトの高電圧を加えることで、カプセル内の電子と金属原子を衝突・放電させ発光するというフィラメントを持たない全く新しいシステムです。

 また、このHIDランプの魅力は光の色だけではなく、消費電力や明るさ、ランプの寿命も今までのランプよりかなり性能が優れている。HIDランプはハロゲンランプに比べ、消費電力は約半分なのに光量は2倍。寿命については約10倍となっています。

 光の色については、色温度という表現を使う。これはある色を放つ光源に含まれる、青紫光と赤色光の相対的な強さを表す数値。定義は、その光と同じ色の光を完全黒体が放射する時の黒体の温度である。単位はK(ケルビン)が用いられる。色温度が高いほど青っぽく、低いほど赤っぽくなる。

 通常のハロゲンランプは約3200K。ディスチャージランプは約4300Kである。

 通常の人がHIDを見ると、白くて綺麗な光だなあ。と感じる程度なのであるが、私程の色マニアにとっては、一昔前のHIDランプと近頃のHIDランプでは、微妙に色が変わってきている。つまり、色温度が下がってきているのだ。

 色温度を下げる要因としては、車検での光色規定、放電による紫外線対策、製造コスト削減による配合変更等が考えられるが、意図的にメーカーが色温度を下げてきているのは明らかである。私のマイカーであるトヨタハリアーも、色温度が下げられたHIDランプとなっている。

 

 この意図的に下げられた色温度を上げようと試みた。色温度を上げたランプも店頭にはあるが、4〜5万円と高価であり、安価に出来る着色作戦を実施した。

 

 手法としては、ランプの外側に着色を施したカバーを取り付ける。透明な筒に青色コーティングしたもので、商品名「ブルーラグーン」として、ある専門店にて販売している。この筒は、耐熱・対衝撃性に優れた水晶で出来ており、熱に耐える無機粉体塗料が塗装されている。この筒をHIDランプにはめ込むのだ。

 しかし、そのまま装着したのでは色温度はアップするが、HIDランプ自慢の光量が低下する(実際装着してみた感じでは、ハロゲンランプ並にまで低下する。)

 そこで、HIDランプの特性をあらゆる角度から調査した結果、照射光の色温度が部分により異なっていることを発見した。ある方向には色温度が高い光が照射されているが、その反対方向には色温度の低い光が出ているのだ。そこで、その色温度の低い部分にのみ着色し、光量は落とさずに色温度を上げる作戦とした。

 

 左の図が装着図である。バルブはとてもデリケートであり、手の油がガラス部分に付いただけでバルブが破裂する。現に私の知り合いでで破裂させた方が数人いた。ヘッドランプユニット内で破裂するため、ユニット内にガラス破片が飛び散り、ユニットごと交換となってしまうので、取り扱いには要注意が必要だ!

 ここで、色温度の高い光が照射される部分に塗装を落とした部分を合わせ、取り付けを行う。ブルーラグーンには、この筒を固定する金具も標準で付いており、回転してしまう恐れも無い。

 

 右写真が、装着前後のライト点灯時の写真である。写真では分かりにくいが、比較するとやや白色に近付いていることが分かる。実際にはかなり変わっており、道路の白線や、ガードレールの反射板でかなり白色になったなと実感できる。

 なお、ブルーラグーンの着色部分と透明部分はかなり微妙に合わせないとだめで、今回は大雑把に作業したため、想定した色には少し足りなかった。次回実施時には、HIDランプのシールドプリント部を目安に塗装部分の設定を行う(次回がいつになるかは不明・・・)

 

 私の車、トヨタハリアーは、特定のグレードのみHIDランプが標準装備されており、それ以外のグレードにはハロゲンランプとなっている。

 このことから、ハリアー開発当初はHIDランプ搭載を想定しておらず、市場投入間際になって無理矢理HIDランプの設定を実施したと思われるフシがある。

 

 その証拠に、HIDバルブの交換時の作業のしにくさだ。そのままだと手が入らないので、ウインドウォッシャー液の補給口の留め付け部を外し、右側にスライドする。そして、おもいっきり堅く締まっているカバーを回転させて外す

 このカバーの締まりが尋常ではない!開けるのに30分はかかった。何度も指がつった。まあ、高電圧の発生するところだけに水の浸入は厳禁であるがための処置であるとは思うが、ここまで堅いとは・・・。ディーラーの工場には何かいいアイテムでもあるのだろうか?

 ようやくカバーが外れた。しかし、ここからも難関が!カバーが取れないのだ!!すぐそばにある配管が行く手を阻み、カバーを取り出すことが出来ないのだ。配管ぶち折れてもいいや!との思いで強引に引っぱり出す。何とか無事に取り出すことが出来たが、他に取り出す方法があるのだろうか?

 この作業、トヨタのディーラーに頼むと、部品代とは別に3000円程度の技術料が取られる。ぼったくりだなあ!と思うが、指がつって全治1週間となった(恥ずかしながら私の事です・・・)ことを考えると、それほど高くないか・・・!?

 

 この作業はかなり危険を伴うので、あまり自信のない方は、プロのカーショップに頼むことをお勧めします。また、作業に精通していないと、バルブの破損も伴います。

 金銭的に余裕のある人は、色温度の高いバルブがあるので、そのバルブに交換することをお勧めします。

 おすすめバルブは、フィリップスのアルティノン フラッシュホワイトです。このバルブはバルブ内の配合を変えており、光量を落とさず色温度をアップ(6000K)したものです。

 ホームページは→http://www.philips.co.jp/lighting/auto/new_event/press_ufwh.html

 市場価格は、29800円らしいです(多分通販)。有名カーショップ店頭価格は37800円でした。(平成14年2月16日現在)