平成11年4月14日、JR東海と鉄道総研が実施したリニアモーターカーの走行試験(5両編成MLX01車両)で、有人走行としても世界記録となる552km/hのスピードを記録した。
走行試験は、中間車3両に定員いっぱいの人が乗車したのに相当する150人分のおもりを積み、実験センターの職員13人の体重を加えた約10トンの負荷をかけられた状態で行われた。
下に、このリニアが実現したことを想定してみた。
恋人同士の二人(慎吾・北海道稚内在住、理恵・東京都文京区在住)は、大学時代に知り合った。慎吾は、就職後北海道の稚内に転勤。理恵は東京でOLをしている。そのため、現在は遠距離恋愛をしている。
毎週金曜日に電話することが日課となっている。今日は金曜日。仕事を終え、家に帰ってきたのは夜9時をまわっていた。今日は理恵が電話する番だ。その時、電話が鳴った。
「慎吾、明日逢いたい。博多で。午前11時に。」
「明日?分かった。飛行機でひとっ飛びすれば余裕だ。」
そう言って電話を切った。
早速時刻表を見る慎吾。しかし、稚内空港から福岡への直行便がない。おまけに、そんな早朝に出る便もない。
「しまった。博多11時には行けない。俺達の仲も終わりか・・・」
そう思ったとき、ふとTVに目をやると、”JR超高速リニア新幹線、明日デビュー”というCMが流れた。そうか、リニアは稚内から出ている。それに乗れば何とか間に合うかも。
次の日、一睡も出来なかった慎吾は、6時稚内発の”りにあ1号”に乗り込んだ。
「確か、理恵は”のぞみ1号”に乗ったはずだ。今頃東京駅で500系のぞみに乗ったとこかな?」
りにあ1号、のぞみ1号とも、定刻どうり出発進行。
7時半、慎吾は車内販売で朝食を買い、車窓を眺めながら食べた。車内放送でまもなく盛岡に到着するというアナウンスが流れた。そのころ、理恵の乗ったのぞみ1号は名古屋に着く手前だ。時刻表を確認する慎吾。
「えっ。理恵はもう名古屋か。さすが世界最速電車500系だ。速い。もしかしたら、間に合わないかも・・・」
8時半、理恵の乗ったのぞみは新大阪に到着。そのころ、慎吾はようやく理恵の住んでいる東京に到着。
「2時間半前、ここに理恵がいたんだな。」そう思うと、よりいっそう理恵に逢いたくなるのである。
「りにあ1号、たのむ。頑張って追いついてくれ。」
9時15分。慎吾の乗ったリニアはようやく名古屋に到着。理恵はすでに岡山を出たところだ。なかなか追いつかないことで徐々に苛立つ慎吾。
「くそっ。550km/hがこれほど遅く感じたのは未だかつてなかった。(おいおい、550km/hを経験したこと自体ないだろっ!)」
10時、慎吾は岡山を出た。理恵は徳山あたりを走行中。かなり距離は縮んだものの、まだ油断はできない。「あと1時間だ。」
10時45分、車内アナウンスが流れた。「ご乗車ありがとうございました。終点博多です。定刻の到着です。」
「やった!!!!間に合った。」
時刻表を確認すると、理恵ののぞみはまだ到着していない。のぞみ1号の到着する12番線で待つ慎吾。
10時49分。のぞみ1号が定刻の到着。理恵の姿を探す慎吾。そこに、
「慎吾ーっ」
こっちに走ってくる理恵。「やっと逢えたね。うれしいっ!!」
抱き合い、そして、二人は軽く口づけを交わした。
「もうこれ以上離れるのは耐えられない。理恵、結婚しよう。」
「うん。これからは毎日キスできるね。」
二人はめでたくゴールイン。稚内で幸せに暮らしたとさ。めでたしめでたし。
えっ、この設定おかしいって?
理恵は、わざわざ早起きして東京6時発の”のぞみ”に乗らなくても、東京8時35分発の”りにあ”に乗ればいいじゃないか!だって?うんうん、もっともだ。でも、リニアとのぞみを競争させたかったので、こういう無理な設定となってしまったのだ。ご了承願いたい。
リニアの実現は、まだ先である。生きているうちに乗れるだろうかという方々もいるだろう。
JR東海の葛西社長は、4月19日の社長会見で、1999年度内に一般市民を対象としたリニアの試乗会を実施するという計画を明らかにした。時期や募集方法については未定だが、葛西社長は試乗でも450km/h程度を出すことは可能だろうと語った。
みなさんもリニアに乗れる日は近いカモ知れない。450km/hのスピードと、浮上走行の乗り心地を体感してみたい。
※このリニアの経路はかってに想定しました。最北端の稚内と山陽新幹線終点の博多を結び、東京−名古屋間は内陸コース、名古屋−大阪間は奈良経由としました。実際にこの経路でリニアが出来ると、山陽新幹線、東北新幹線の存在価値がなくなってしまう。