巨大天体が接近!!衝突は免れた!?

過去に太陽系を崩壊させる一歩手前まで迫っていた事が最近判明した。その出来事とは、太陽系に別の星がニアミスしたというものだ。
米国、欧州、南米の天文学者らからなる国際研究チームが発表した論文によると、この星は太陽系外縁部を取り巻く彗星の集まりの中を通過した可能性が高いという。
今から約7万年前、太陽系圏内にその星は飛来した。太陽系中心にある太陽に最も接近した時の距離は、約7.6兆km(0.8光年)。数字で見るとニアミスには程遠いように感じるが、宇宙スケールでは大接近なのである。
7万年前といえば、人類の祖先がようやく衣服を着るようになった頃である。
この星のニアミスにより、人類どころか地球全生命が絶滅の危機に瀕した事は、当時は誰も知る由もなかったのである。

太陽系とニアミスした星とは...


太陽系とニアミスした時の連星の想像図。図左側にある白く明るく見える星が太陽。太陽から0.8光年の位置をニアミスしたとされている。このあたりは、膨大な数の彗星が周回している領域である。(ILLUSTRATION BY MICHAEL OSADCIW, UNIVERSITY OF ROCHESTER)
このニアミスした星は、赤色矮星(わいせい)と褐色矮星からなる連星で、現在は太陽系から20光年離れた場所を移動しており、太陽系からどんどん離れている。
赤色矮星とは、夜空に輝く星(恒星)よりも大きさが小さいため、明るく光り輝くほどのエネルギーを持っておらず、赤く暗くひっそりとたたずんでいる星である。このため、肉眼では暗すぎてその存在を確認する事は出来ない。
しかし、7万年前のニアミスした際には地球にかなり接近したため、うっすらと赤く不気味に光るこの星が、肉眼でも見る事が出来たようである。当時の人類は不気味に光るこの星を見てどう思ったのでしょうか。何か不吉な事が起こるのではと不安を感じ取った人も居たのではないだろうか・・・
連星・・・2つの恒星同士がお互いの重心の周りを軌道運動している 天体。双子星(ふたごぼし)とも言われる。

太陽系とのニアミスがあった事がどうして判った?


ショルツ星が太陽系とニアミスした軌跡(赤線)。太陽の周りの多数の円は太陽系の各惑星の軌道を描いてある。太陽からの距離は対数表示としているため、見た目の距離感とは異なる。図中青い帯は彗星が漂っている領域(通称オールトの雲)で、この帯の中を通過したと思われる。
ニアミスした連星は「ショルツ星」と呼ばれ、2013年に発見された。その星の動きを観測し、軌道計算したところ、太陽系にニアミスした事が判明したという。今のところ、地球誕生後最も接近した星が、このショルツ星だそうである。
ニアミスによる影響は、何もなかったのであろうか?気になるところである。
ショルツ星が通過した領域は、彗星が漂っており、このあたりから太陽に向かってくる彗星は「長周期彗星」と呼ばれる公転周期200年以上の彗星が周回している。近年地球に接近した彗星では、1996年に話題となった「百武彗星」が「長周期彗星」である。ちなみに百武彗星の公転周期は7万2千年と見積もられている。
そんな遠いところを通過したくらいでは、地球への影響は皆無ではないのか?感覚的にはそう思ってしまう。しかしこのあたりも太陽の重力圏内であるため、付近の彗星をかき乱し太陽に向かって彗星が大量に降り注いだり、惑星の軌道を乱したりする恐れもあったのである。

これから先にニアミスは起こるのか?


ハッブル宇宙望遠鏡による観測で発見された132億光年彼方の銀河。この銀河は光を放ってから132億年かけてようやく地球に届いたため、132億年前の姿である。宇宙誕生からわずか数億年しか経過しておらず、宇宙誕生の謎の解明に近づけると期待されている。(University of California, Santa Cruz), R. Bouwens (University of California, Santa Cruz, and Leiden University), and the HUDF09 Team)
近年、宇宙観測の技術は格段に向上し、宇宙の果て付近にある天体まで確認できるようになった。現在までに観測された最も遠い場所にある銀河は、地球から132億光年先にあるもので、ハッブル宇宙望遠鏡により発見された。宇宙の果てからわずか数億光年手前の銀河である。
観測技術の向上と、スーパーコンピュータによる演算スピードの向上により、天体の軌道予測精度はかなり向上している。これらを駆使して導き出した次のニアミス候補天体は、HIP85605という星であり、今から24万年~47万年の間に接近するという。しかし、7万年前のニアミスよりは遠いところを通過すると予測されている。
24万年後なんて、人類が存続しているかも分からない程先の話で、心配する必要は無いようだ。

もし恒星が近づいてきたら、打つ手はあるのか?

7万年前にニアミスしたショルツ星は、太陽の0.08倍程度の重量であり、太陽と比べるとかなり小さい。とは言っても地球と比べると2万5000倍もある重さの星であり、もし真っすぐ向かって来られたらなすすべはない。
また、直接衝突しなくても、付近を通過しただけで重大な影響を及ぼす事になる。地球は太陽から程良い距離のところを公転している。そこに大きな重力を持つ天体が近くを通過した場合、その重力に引っ張られて公転軌道を崩されてしまう。そうなると、楕円軌道になったり、最悪太陽に引き込まれたり、太陽から離れてしまう事となる。こうなると人類は生存できなくなってしまう。
今のところ、ニアミスの心配はなさそうで、一安心である。

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