計画発表からほぼ10年。台湾新幹線と呼ばれる「台湾高速鉄路」プロジェクトがついに動き出した。総工費4600億元(約1兆6560億円)、この事業はすでに中南部の一部で建設が始まり、2005年の開業を目指す。

 現在、台湾北部の台北と南部最大都市の高雄を結ぶ鉄道は、特急「自強号」でも4時間半ほどかかる。このため、台湾の人々は、台北から高雄や台南などへ行く場合1時間足らずで着く飛行機を使う。

 利用者が多いので、高雄便などはほぼ10分おきに出ている。しかも朝夕はラッシュで常に満員。キャンセル待ちの列が常に空港のカウンターに並ぶ状況だ。だからといって、これ以上の増便は、台北市内空港の場合まったく不可能。現状1分間に1機が離着陸するという超過密状態である。

 新幹線建設は、今完全に飛行機に負けている鉄道の巻き返しとなる。台北−高雄間345キロを約90分で結び、市街地という駅のロケーションを考えれば、実質所要時間は飛行機とあまり変わらない。

 さらに、一度に運べる旅客数は飛行機とは比べものにならない。また、運賃も魅力だ。台北−高雄間の現行航空運賃は約2千元。新幹線の予定運賃は約1千2百元で、飛行機の6割程度とかなり安い。

 

 気になるこの台湾新幹線の最高速度であるが、時速350キロ。平均時速は300キロにも及ぶ。現在世界最速である日本の新幹線(写真)よりも速く、世界一となるのは間違いない。

 ちなみに、台北−高雄間345キロの距離を日本に置き換えると、新大阪−広島間にあたる。現行500系のぞみ号では最速で74分かかる。おや?速度では日本の新幹線を上回っているのに、到達時間は日本より遅い・・・?おそらく駅数の違いかと思う。日本では新大阪−広島間は岡山しか停車しないが、台湾新幹線の場合は、始発、終着駅の台北と高雄の両駅を含めて九駅となる。駅の停車時間を入れると、90分もかかってしまうのではないか?

 

 この台湾新幹線建設には、日本企業も大いに関係している。車両や信号装備、変電設備などの電気品は日本連合7社(三菱商事、三井物産、丸紅、住友商事、三菱重工業、川崎重工業、東芝)が受注を内定している。

 時速350キロを出すこの車両は、東海道・山陽新幹線で使われている「700系」の改良型を台湾側に提案している。新幹線車両の海外輸出は初めてとなる。

 この日本連合の受注内定までには大変なドラマがあった。車両を含む機電システムは、一時は価格面から欧州勢が圧倒的優勢にあり、受注はほぼ確実とみられていた。しかし、性能や安全面から日本の新幹線を見直す意見が台湾内で強まり、今年6月になって大逆転の劇的受注が内定した。

 

 日本の鉄道は、スピード競争には敏感だ。台湾新幹線が出来れば世界最高速の座を奪われるのは目に見えている。しかし、現状の路線では、今以上に速度を上げるのは出来ないだろう。

 しかし、近々日本にはリニアモーターカーが走るようになる。現在年6回程度一般者対象の試乗会が行われている。この試乗でも時速450キロを出すことから、営業速度もこれ以上のスピードになるだろう。

 

Toppageに戻る