あまりにも長い旅であった。帰りもまた同じ長旅が待っていると思うと心が折れる。しかし、このミッションをクリアすれば、何の不自由もない億万長者の生活が待っている。それだけを思いながら、ようやくスペースシャトルはダイヤモンド星に到着した。

 ダイヤモンド星という名前からして、キラキラした惑星だと想像していたが、実際に見ると、想像とは全く異なる黒い惑星がそこにはあった。本当にダイヤモンドがあるのだろうか?40年もの歳月をかけ、2500兆円もの超大金をかけてきて、ダイヤモンドが無かったとなると、私はショック死してしまうかも知れない。

 さて、地面に降り立つとしよう。スペースシャトルのドアを開けようとした時、異常にドアノブが熱い事に気がついた。外気の温度計を確認したところ、なんと2000℃を超えている。尋常じゃない暑さである。それもそのはずであり、この惑星は恒星から異常に近いところを公転しており、地球から見た太陽よりも60倍も大きく見え、3600倍も明るく輝いているようだ。そりゃあ、熱いのもうなずける。さらに、眩しすぎて目も開けられない。おそらく目を開けたら即失明するだろう。昼間に活動するのは不可能である。

 涼しい夜になってから作業に入ろうと思ったが、夜になっても気温は1600℃までしか下がらず、鉄の融点(溶け出す温度)約1500℃をわずかに超えている。鉄で出来ている重機は長時間外には置いておけないので、夜間の短時間が勝負である。

 日が暮れて辺りが暗闇となった時、パワーショベルを動かして地面を掘り起こしてみると、黒い炭素の層の下から美しい輝きを放つダイヤモンドの層が出てきた。この輝きからすると、かなりの質のいいダイヤモンドであることが分かる。しかし、ゆっくりはしていられない。早くもパワーショベルのバケットが熱で溶けてきた。さらに時間が経過するにつれて、油圧用の油や燃料の軽油も蒸発してしまい、50トン分を掘ったところでついに動かなくなってしまった。

 パワーショベルは100台しか用意していない。このペースだと、5000トンしか掘れない計算になる。想定価格にして約3000兆円。まあ、これでも500兆円余りの利益が出る計算だ。

 頑張って、夜な夜なダイヤモンドを掘り起こし、持ってきたパワーショベル全てを酷使し、最終的には5000トンの掘り出しに成功した。透明度が高く高品質であるため、想定よりも高値で売れるかもしれない。期待を膨らましながら、掘り起こした5000トンのダイヤモンドを積み込み、地球に向けて出発した。

 これからまた40年の長旅である。しかし、思っていたより高品質のダイヤモンドの持ち出しに成功したこともあり、気持ちは高ぶっている。利益の500兆円は何に使おうか。積み込んだ高品質の煌びやかに輝くダイヤを眺めながら、残り少なくなったワインを飲んだ。心地よいロケットエンジンを奏でながら、スペースシャトルは地球への帰路につくのであった。

>>つづく

 



ダイヤモンド星(かに座55番星e)から見た太陽(恒星)の想像図。恒星からかなり近い距離(地球と太陽の距離の100分の1程度)であるため、表面温度は2000℃以上。夜間でも1600℃程度までしか下がらず、生物の存在は無いとされる。恒星から異常に近い事で、ダイヤモンドが生成するために必要な高温高圧の条件が揃ったと考えられている。



パワーショベル。正式名称は油圧ショベル。「パワーショベル」は小松製作所が商品名として使用し、広く普及した。他に、ショベルカーやユンボなどの名称を持つ。
アームの先には鉄製のバケットが付いていて、これで土を掘るのであるが、実際ダイヤモンドを掘るにはダイヤモンドよりも硬いバケットが必要となる。